The Road
著者:コーマック・マッカーシー
訳者:黒原敏行
発行日:
2008年6月25日 初版発行
2008年7月10日 再版発行
発行所:早川書房
定価:本体:1,800円+税
内容紹介・感想
「舞台はおそらく近未来のアメリカで、核戦争かなにかが原因で世界は破滅している。
空はつねに分厚い雲に覆われ、太陽は姿を現わさず、どんどん寒くなっていく。地上には灰が積もり、植物は枯死し、動物の姿を見ることはほとんどない。
生き残った人間たちは飢え、無政府状態の中で、凄惨な争いを続けている。そんな死に満ちた暗澹たる終末世界を、父親と幼い息子がショッピングカートに荷物を積んで旅をしていく。
寒冷化がいよいよ進み、次の冬が越せそうにないため、暖かい南をめざしているのだ。」
(訳者あとがきより)
父親は極限状態の中、自身が鬼になる覚悟でいる。敵を殺すことも辞さず、他人を助ける事も極力避ける。
一方息子は自分たちは善であり、悪と戦っているだけという父の話を信じ、他の生存者を助けてほしいと懇願する。
この極限状態の中で、どこまで人間らしさを保てるかが試されていきます。
父と子の会話が随所で描かれますが、これがまるで一篇の詩のようです。2007年度ピューリッツアー賞受賞。
SF的設定を借りた深い作品です。
どうした?
なんでもない。厭な夢を見た。
どんな夢だ?
別にいいんだ。
大丈夫か?
ううん。
彼は少年を身体に両腕をまわして抱いた。もう大丈夫だ、といった。
ぼくは泣いていた。でもパパは起きてくれなかった。
ごめんよ。すごく疲れてたんだ。
夢の中の話だよ。
(本文より)