HANNIBAL
著者:トマス・ハリス
発行日:2000年4月10日 発行
(原書発行:1999年)
発行所:新潮社(新潮文庫)
上巻
あの血みどろの逃亡劇から7年・・・・・。
FBI特別捜査官となったクラリスは、麻薬組織との銃撃戦をめぐって司法省やマスコミから糾弾され、窮地に立たされる。
そこに届いた藤色の封筒。しなやかな手書きの文字は、追伸にこう記していた。「いまも羊たちの悲鳴が聞こえるかどうか、それを教えたまえ」・・・・・・
だが、欧州で安穏な生活を送るこの差出人には、仮借なき復讐の策謀が迫っていた。
(カバー裏より)
目次
第一部 ワシントンDC
第二部 フィレンツェ
下巻
執念を燃やす復讐鬼は、クラリスを囮に使って博士をおびき出す計画を整えつつあった。
その先には究極の屈辱となる報復が用意されている。かくして”怪物と天使”の運命は凄絶に交錯するときを迎えた・・・・・・。
スティーブン・キングをして「前作を凌ぎ、『エクソシスト』と並んで20世紀に屹立する傑作」と言わしめた問題作、登場。
(カバー裏より)
目次
第三部 新世界へ
第四部 恐怖のカレンダーの注目すべき出来事
第五部 肉、一ポンド
第六部 長いスプーン
感想
「羊たちの沈黙」から十一年。沈黙を破って登場した本作。
物語の中ではバッファロウ・ビル事件から七年が経過しています。
上記はワシントンDCを舞台に幕を開ける上巻の冒頭のシーンです。
車をぶっ飛ばす女性捜査官といえば、「リンカーン・ライムシリーズ」(1997年~)のアメリア・サックスを思い出しますが、考えてみればトマス・ハリスの前2作でもプロファイリングという捜査手法がとられており、先駆的な作品といえるでしょう。
そして本作ではレクター博士の”記憶の宮殿”に秘められた凄惨な過去が描かれます。
FBIが猟奇的殺人鬼を追い詰めていく前2作と趣を異にして、レクター博士の過去、内面、趣味嗜好まで掘り下げ、壮絶な復讐劇を描く本作もまた興味の尽きない傑作といえるでしょう。
また下巻には、レクター博士の美術、音楽、美食に対する造詣の深さの根源が垣間見える一節があります。
「こうして新居の準備がほぼすむと、彼は自分に一週間の休暇を奢り、ニューヨークで心ゆくまでコンサートや美術館詣でを楽しんだ。フランスに住むいとこで偉大な画家のバルテュス宛に、実に興味深い美術展示会のカタログを送ったりもした。」
バルテュス展↓