嵐、ゴルフ、ミステリーの日々2

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SFコミックの傑作!!『寄生獣』岩明均著

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SFコミックの傑作!!

『寄生獣』全10巻

岩明均著

 

 ある夜、空からテニスボール大の謎の物体が飛来する。その見た目は、今見ると球形の形状に突起物があり、奇妙にもコロナウイルスを連想させる。

 その物体は地上に接地、ポヨンと軽くバウンドするとパクンと二つに割れ、中からドリル状の突起を持つ蛇のような生物がニュルッと飛び出してきた。それは睡眠中の人間の耳や鼻から侵入し、人間の脳を奪い頭部に寄生する寄生生物(パラサイト)なのだった。

 この物語は寄生生物の脳への侵入は防げたものの、右腕に寄生されてしまった少年、新一と寄生生物ミギー(右手に寄生したから)の奇妙で波乱万丈な運命の物語である。

 人間らしい感情など一切持たない冷酷なミギー、一日で言葉を覚え、図鑑や書籍などを読み漁る知能を持つ。やがて他の寄生生物と遭遇し、ミギーと共闘し、勝利を収める新一。自らの生存を第一に考え、人間の生死など一顧だにしない冷酷無比なミギーだが、その知力、勇気、ユーモアには時に人間臭さも感じる。新一と交流する中で、変化、友情の芽生え、成長もあったのかもしれない。もう一人の重要人物田宮良子(田村玲子)のように。

 ときに酸鼻を極める描写、新一を襲う悲惨な運命に目を覆いたくなる。しかしSF、ホラー的な興味にとどまらず、家族の愛情、親子の愛情などを描き、終盤には人類とは?、地球生命との関わり?とは・・・という壮大なテーマに挑み、一つの答えを描く傑作となっています。

 特に8巻、9巻、10巻の展開は圧巻。人間を研究し、恐るべき能力と知力を秘めた田村玲子、寄生生物に家族を奪われたうだつの上がらない探偵倉森、寄生生物を追う平間刑事、寄生生物を見分ける目を持つ殺人鬼浦上(うらがみ)、新一の身を案じる里美。

 探偵倉森の仕掛ける、ひかり第一公園での田村玲子との闘いとその結末は涙無くしては読めない。その後の怒涛の展開と余韻を残すエピソードも秀逸。タイトルの寄生獣が意味するところも明かされる。

 10巻巻末の著者の付記によると、違う結末の構想もあったそうだが、社会の動きや深い思索の果て、本作の結末に辿り着いたという。結果的に単なる甘い文明批判、人間賛歌にとどまらず、作品の奥行、完成度を増すことになったと思う。

 

 

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カバー裏

 

書名:寄生獣 全10巻

著者:岩明均

発行年月日:

第01巻 1990年7月23日 第1刷発行

第10巻 1995年3月23日 第1刷発行

発行所:講談社

定価:本体485円~505円(税別)

 

 アフタヌーンKC版の他、完全版全8巻、下記のようなデザイン化されたカバーの新装版、文庫版などが発売されている。

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