一匹狼の活躍を描く連作活劇が”完全版”で復活!!
『吸血鬼飼育法 完全版』
都筑道夫著 日下三蔵編
本書のタイトルから中身を想像するのはなかなか難しい。第一部に収められた四篇は、1968年3月「一匹狼」として桃源社より刊行された。
主人公は江戸時代後期に実在し、歌舞伎や講談にも登場する小悪党、片岡直次郎と同じ名前を持ち、渋谷宮益坂の近く、小さなビルの四階に「faa」(ファースト・エイド・エイジェンシイ」なる事務所を構え、報酬次第でどんな依頼も引き受ける”よろず請負稼業”を営んでいる。
片岡直次郎は、およそ解決方法の見当がつかない無理難題を飄々と引き受ける、いわゆるトラブル・シューターである。
本作はハードボイルド、ミステリーの趣向を凝らしながら悪漢小説の側面も持つ。興味深い謎の提示、意表を突く展開、予期せぬ結末。ピンチにも減らず口を叩き、金のために謎を解く直次郎が小気味よい。また昭和の香り漂う、良い意味でレトロな雰囲気も魅力である。
中でも謎を秘めた絵画を巡りストーリーが二転三転する国際謀略スパイ小説的味わいを持つ「俺は切り札」が面白い。
タイトル:吸血鬼飼育法 完全版
著者:都筑道夫
編者:日下三蔵
本文イラスト:山藤章二(旧版より再録)
カバーデザイン:金井久幸
カバーイラスト:市村譲
発行日:2020年9月10日 第一刷発行
発行所:株式会社筑摩書房
定価:本体900円+税