著者:トマス・ハリス
翻訳・解説:高見浩
発行日:平成19(2007)年4月1日発行
発行所:新潮社(新潮文庫)
【上巻カバー】我、いかにして怪物となりしか
【下巻カバー】今、善悪の彼岸に血潮満ちたり。
内容紹介
1941年、リトアニア。ナチスは乾坤一擲のバルバロッサ作戦を開始し、レクター一家も居城から狩猟ロッジへと避難する。彼らは3年半生き延びたものの、優勢に転じたソ連軍とドイツ軍の戦闘に巻き込まれて両親は死亡。残された12歳のハンニバルと妹ミーシャの悲しみも癒えぬその夜、ロッジを襲ったのは飢えた対独協力者の一味だった・・・・・。ついに明かされる、稀代の怪物の生成過程!
(上巻カバー裏より)
感想
前作「ハンニバル」の発表から7年。
作中の時計の針は1941年まで巻き戻されて、少年時代から若き日のハンニバル・レクターが描かれています。
冒頭に宮本武蔵筆「枯木鳴鵙図」が掲げられ、随所に日本との深い関わりが言及されています。
すぐに想起されるのは、やはり日本の精神”シブミ”を会得した暗殺者ニコライ・ヘルの活躍を描くトレヴェニアンの「シブミ」(1979年)でしょうか。
また巻末の訳者高見浩氏の解説がとても詳細で素晴らしいのですが、紫夫人についての指摘も、まことに的を射た的確なものといえるでしょう。
「ハリスが前作『ハンニバル』の中で、あの孤高の画家バルテュスはハンニバルのいとこである、と記している事実も見落とすわけにはいかない。バルテュスに長年連れ添ったのが節子夫人という淑やかな日本女性であることは周知の事実である。このバルテュス夫妻の在り様がロベール・レクターと紫夫人というカップルの一つの原型になっていることは間違いのないところではあるまいか。」
過去記事より
「シブミ」
「バルテュス展」