「TENET」プログラムより
未知なる映像体験!人類を滅亡から救え!!
キーワードは『TENET(テネット)』感想
「TENET(テネット)」は「メメント」「バットマンダークナイト3部作」「インセプション」「インターステラー」など時間や空間、深層心理などを題材に、難解で考察を要求する内容でありながら、エンターテインメント作品としても成立させる稀有な映像作家、クリストファー・ノーラン監督の最新作です。
2001年に日本で公開された「メメント」では、妻を殺され、その時の傷がもとで10分間しか記憶が保てない主人公の犯人探しを、終わりから始まりへ時系列を逆に映し出していくという斬新な手法で出世作となりました。
「メメント」では編集という映画的手法で時を操ったノーラン監督ですが(メタファーとして壁にめり込んだ銃弾が銃口に引き戻される描写も有り)、本作では登場人物や出来事が、物理的に時間の中を逆行するという、予告編を見ただけでもワクワクするような不思議な世界観を作り上げています。
映画『TENET テネット』スペシャル予告 2020年9月18日(金)公開
映画『TENET テネット』スペシャル予告 2020年9月18日(金)公開
585,858 回視聴•2020/08/31
より
今回TOHOシネマズ日本橋の巨大スクリーンTCXにて鑑賞しましたが、迫力の映像と重低音の響く音響に圧倒されます。
本編上映前の予告編が、ノーラン監督がかねてからのファンであり、いつかはメガホンをとりたいといっている007シリーズの新作「007ノー・タイム・トゥ・ダイ」であったり(この予告編がまたかっこいい)、本編の主要キャストであるケネス・ブラナーが監督、主演の「ナイル殺人事件」であったりと本編上映前からこれでもかと気分を盛り上げてくれます。
■コンセプト
スパイ映画というジャンルに時間の概念をプラスしてスパイ映画史に影響を与えようとしているのだそうです。(監督談)
■キャスト
配役が大変興味深くて、主役の名もなき男を演じたジョン・デビッド・ワシントンは有名なデンゼル・ワシントンの息子さんだそうです。
そしてニールの相棒を演じたロバート・パティンソンは、若かりし頃に「ハリーポッターと炎のゴブレット」での印象的で重要な役柄であるセドリック・ディゴリーを演じました。ノーラン監督の映画は「インセプション」でもそうですが、魅力的な相棒を配するのがうまいですね。
そしてヒロインのキャットを演ずるのが10頭身はあろうかというスタイルの良さと美貌のエリザベス・デビッキ。「ナポレオン・ソロ」をリメイクしたレトロでオシャレなスパイ映画、『コードネーム U.N.C.L.E.(アンクル)』で魅力的な敵役を演じていました。
敵役の武器商人、セイターにはケネス・ブラナー。「ハリーポッターと秘密の部屋」で闇の魔術に対抗する防衛術の先生であるギルデロイ・ロックハートを演じていました。今回かなりハリーポッターに縁のある配役といえそうです。
さらにノーラン映画の常連でもあるイギリスの名優マイケル・ケイン。インセプション同様に主人公に道筋を示す役割を演じます。
■ストーリー
コンサート開演間近の満員のキエフ国立オペラ劇場に突如現れる武装グループ。これを予期したかのように出撃する特殊部隊。緊迫する導入部から一瞬も目が離せない。いろいろと伏線が隠されています。
正直なところ、大まかな流れを追うことは出来ても、初見ではなかなか理解できない点が多い。何が起きてるのか? なぜそうなるのか?・・・
時間逆光現象を研究する女性科学者バーバラ(「ハリーポッターと炎のゴブレット」でフラー・デラクールを演じたクレマンス・ポエジー)が言う通り、とりあえずは「理解しようとしないで。感じて」というのが鑑賞姿勢として正しいのかもしれません。
とはいえ例えばドラえもんの「ぼく、桃太郎のなんなのさ」やタイムトラベルを扱った諸作品に古くから触れている我々にとっては、違和感や拒絶反応なく受け入れられる。また「ハリー・ポッターとアズカバンの囚人」に登場した逆転時計を使った一連のシークエンスも連想させます。
■TENETの謎
タイトルともなっている「TENET」ですが、「SATOR式」と呼ばれるラテン語の回文が基になっています。これが登場人物の名前や設定に大きく関わってきます。
SATOR AREPO TENET OPERA ROTAS
農夫のアレポ氏は馬鋤きをひいて仕事をする
この文章は縦に並べて縦読みをしても成立します。
SATOR (セイター、武器商人)
AREPO (アレポ、ゴヤの絵の贋作者)
TENET (テネット)
OPERA (オペラ、オペラハウス)
ROTAS (空港の免税倉庫)
作品の中で明かされた謎とともに、観客に委ねられた謎もあり、いろいろな考察を楽しめるとともに、続編も期待させる作り方になっています。
スケールの大きなアクションエンタテイメントであるとともに奥深い作品となっています。
公式プログラムにはSATOR式の回文や東京工業大物理学系助教による時間逆光現象についてのかなり詳細な考察などがあり、鑑賞後に読むといろいろと理解できることがあり大変参考になります。