DO ANDROIDS DREAM OF ELECTRIC SHEEP?
著者:フィリップ・K・ディック
訳者:浅倉久志
カバー:中西信行
発行日:1977年3月15日 発行
(原書発行:1968年)
発行所:早川書房(ハヤカワ文庫SF)
そしてタイトルにも関係してきますが、生きている動物を飼うことがステータスシンボルとなる世界で主人公は、見栄のため人工の電気羊を飼っています。
そして”全太陽系の男女が一つの心になれる”というマーサー教なる宗教が重要なファクターとして登場します。共感ボックスなる装置でアクセスすると現れる共通したイメージ。
「茶一色の荒れ果てた上り坂。ひからびた骸骨のような雑草が、太陽のないどんよりとした空にむかって、ぬっと斜めに突きだしている。ぽつんとひとつ、人影らしいものが、苦しげに山腹を登っていく。色あせ、形もさだかでないガウンをまとった老人で、敵意を持つうつろな空からひっさらってきたような着衣は、わずかな部分しかおおっていない。」
繰り返し現れる荒涼としたイメージ(カバーイラストのイメージ)が重要なモチーフとなっています。
映画は、全体としてハードボイルド、酸性雨の降りやまぬ世界で、感情的にもウェットなイメージ。
原作は、どちらかというと抒情性を排した、ドライでユーモラスな世界観。その中で人間とアンドロイド、現実と虚構の境界を描いています。
映画は、映像と音楽を用いたリドリー・スコット監督の強烈な未来世界のビジュアルと出演者の熱演により、より感情的に訴えかけてきますが、どちらもそれぞれの表現形式の中でのSF史に残る傑作といえるでしょう。