嵐、ゴルフ、ミステリーの日々2

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魔窟を舞台としたロマンスと幻想『九龍ジェネリックロマンス』1巻 眉月じゅん著

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魔窟を舞台としたロマンスと幻想

九龍ジェネリックロマンス 1巻

Kowloon Generic Romance

眉月じゅん著

 本作品は、映画化もされた前作「恋は雨上がりのように」の作者、眉月じゅん氏による、かつて香港にあった九龍城砦(九龍城塞)を舞台としたラブストーリー漫画である。ただし現実にあった九龍城砦を舞台としているかは1巻の時点では不明、普通のラブストーリーであるかも不明である。

 ベランダの窓際で足を組み、煙草を吸いながら、西瓜を食べる女性。

 カメラがどんどん引いていくと、女性のいる場所が巨大な九龍城のアパートの一室であることがわかる。見開きで描かれる俯瞰図に重なって現れるタイトル。オープニングが非常に映画的で印象的である。

 ひしめく建物の隙間から垣間見える空中には、地球を模して建築が進むジェネリック地球(テラ)が浮かぶ。途端にサイバーパンク色が強くなる。

 本作と直接の関係はないが、サイバーパンクSFの先駆者、ウィリアム・ギブスンは際限なく拡がるネット空間を現実になぞらえたような九龍城砦に強く惹かれていたという。

 また1巻のラストに提示される強烈な謎は、かつて「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」をはじめとした諸作品で、SF作家のフィリップ・K・ディックが追い求めた本物と偽物の境界、アイデンティティの捜索といったテーマにつながるのであろうか・・・?

 現在単行本は6巻(2021年11月24日第一刷)まで刊行されており、各巻の冒頭の1話が、過去?を紐解く回となっており、謎が少しずつ解明?されるように、単行本の構成が綿密に考慮された形となっている。

 

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『恋は雨上がりのように』

小学館ビッグコミックス 全10巻完結