今週のお題「冬のスポーツ」
登山、クライミング
1998年度 第11回柴田錬三郎賞 受賞
神々の山嶺(いただき)
夢枕 獏 著
ヒマラヤ登山史上最大のミステリーとでもいうべき事件、エヴェレスト山頂付近で消息を絶ったマロリーとアーヴィン、果たして彼らは山頂に辿り着いたのか。それを知る方法が残されているという。その方法とは、マロリーのカメラに残されたフィルムを現像すればよいのである。これを知ったとき、著者にアイデアが閃いたという。
夢枕獏氏の作品は幻獣少年キマイラから読んでおり、派生した闇狩り師やノベルスのサイコダイバーシリーズも読んでいる。その後格闘小説の獅子の門、飢狼伝と拡がっていき、多くの作品が長くシリーズ化されているのが特徴である。
本作は、純粋な山岳小説として単行本上下巻2冊できっちりと完結している。終盤、極寒のエヴェレスト山中で、主人公が短いセンテンスで自問自答する描写は、格闘小説のクライマックスでも同様の手法が用いられており、極限状態に陥った主人公の心理をよく表現している。その文体はある種、詩のようでもあり、幻想的でもある。
著者自身が、本作を漫画化するなら谷口ジロー氏以外考えられないということで、後に谷口ジロー氏により漫画化されました。原作とは異なったラストが描かれており、読み比べてみるのもよいでしょう。
「神々の山嶺」漫画版 画:谷口ジロー 集英社ビジネスジャンプ愛蔵版全5巻